歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

あおり運転&暴行、京アニ放火事件、容疑者たちの妄想

news.livedoor.com

 

茨城県常磐道であおり運転をしたうえ、男性を殴ったとして逮捕された宮崎容疑者は、あおり運転を始めた理由について「前を走る被害者の車が遅くて、自分の運転を妨害されたと感じて怒ってしまった」、暴行の理由については「停車させた後、車をぶつけられたから」と話しているそうです。

 

このブログで繰り返し指摘していることですが、妄想症のある人は事実関係を逆転する話をして、自分が被害者であるかのように主張します。

 

宮崎容疑者は、2018年3月にも、タクシー運転手を監禁した疑いで京都府警に逮捕されているそうですが、その被害者が、宮崎容疑者の異様な言動について、次のように語っています。

 

「抜いてくる車が幅寄せしてきてるとかこっち見てたとか、妄想でしかないですね。誰も何もしてないので...。自分で110番に電話して、こういうふうなことされている(車に)囲まれている、5台6台。怖いからはよ来て守ってくれとか、そういう言い方するんですね」

 下のサイトより引用。

www.msn.com

 

妄想といえば、京都アニメーション放火事件の容疑者も、そうです。青葉容疑者は、犯行直後に「(小説を)パクりやがって」と叫んでいたとのことです。昨年の9~11月、ネット掲示板に、「小説をパクられた」「最初から原稿を叩(たた)き落とし裏切る気だった」「絶対に許さん」「爆発物もって京アニ突っ込む」「無差別テロ」などと京都アニメーションを名指しした書き込みがあり、警察が関連を調べているようです。

 

www.asahi.com

 

こうした人たちの主張は、被害妄想に基づいていると言っていいでしょう。青葉容疑者の場合は、自分の作品には盗作されるだけの価値があるとする、誇大妄想のようなものもあったのかもしれません。

 

妄想症はなぜ危険か

妄想症のある人がなぜ危険かというと、「自分は正しい、相手が悪者で、自分は権利を侵害されている。だから、当然の報復をしている」という猛烈な信念で凝り固っているため、攻撃に容赦がありません。

しかも、どんどんその脈絡で妄想ストーリーが持続的に発展していくので、現実離れした、執念深い憎悪になります。

 

今回取り上げた二つのケースのように、誰から見ても容疑者が異常者に見えることもありますが、妄想性障害者の中には、警戒心が強く、自意識が過剰で、自分が他人からどう見えるかを非常に気にして正常者を装う人たちもいます。

彼らはもっと狡猾に、本当に自分が被害者であるように、第三者にも自分の妄想ストーリーを共有させようとします。そうした傾向が強くなればなるほど、犯罪的な事件は起こしにくいですが、被害者が汚名を晴らせないような、嫌なトラブルに巻き込んで、攻撃してきます。

 

犯罪に結びつく精神病と、そうでないもの

青葉容疑者には精神科への通院歴があることなどが報じられている一方で、重大犯罪をすぐに精神疾患に結びつけることを危惧する声もあります。

 

gendai.ismedia.jp

 

ここでポイントになるのは、次の点です。

 

1.精神疾患にもいろんな病気があり、一般的には犯罪に結びつかないことが多い

思うに、多くの精神疾患では、患者自身が自分の病気と闘うのに必死なので、他人を攻撃している暇などないのではないでしょうか。統合失調症のような病気の場合も、被害妄想が生じますが、この病気の場合、自分を攻撃している相手というのが、たとえば「悪の秘密組織」といったように、空想上の、巨大で漠然とした対象であることが多いので、実体のある誰かが、妄想上の加害者として攻撃されることは、決して多くはないと思われます。

 

2.うつ症状のために受診する性格異常者たち

たとえば人格障害者や何らかの妄想症がある人が自分から精神科を受診する際、何を訴えて、何を治してもらおうとして受診するかというと、多くは自分の「うつ症状」で、その場合、病院の方では抗うつ剤を処方するために、「うつ病」という病名を付けます。

大概の病院では、薬の処方をするために、初診に45分間くらい患者の話を聞き、二回目以降はそんな時間は取りませんから、根底にどんな問題を抱えているかということまでは立ち入らないことも多いと思います。

そのためではないかと思われますが、たとえばDV加害者が精神疾患にかかっている場合の統計の中に、「うつ病」などという病名が入ってきてしまったりします。しかしもちろん「うつ病」は、気力が無くなって寝込むような病気であって、ひとを支配しようとして暴力を振るう病気ではありません。

このように錯綜した事情があるので、患者が自発的に通うようになった病院での病名と、犯罪を犯して精神鑑定する場合の病名は、違ってくることがあります。

たとえば、妄想性障害者には病識がなく、自発的に自分の「妄想」を治してもらいに通院することはほとんどありませんので(悪いのは自分の「妄想」ではなく、相手だと思っていますから)、妄想性障害についての解明は、司法精神医学の領域でなされていると言われています。