歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

パーソナリティ障害の傾向とモラハラDV・タイプの異なり

 

パーソナリティ障害といっても、複数の障害が混じっている場合もあります。

モラハラやDVをする人に自己愛性パーソナリティ障害があるといっても、境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害や妄想症などが混じっていると、攻撃の展開の仕方が違ってくると思います。

 

以下、私が現時点で気が付いた範囲で書きます。

 

 

自己愛性パーソナリティ障害+境界性パーソナリティ障害

 

境界性パーソナリティ障害が混じっていると、被害者が逃げようとしても、「自殺してやる」とか言って、しがみついてきます。それでも被害者が逃げると、ストーカーになりやすいです。子どもを人質にしたり、被害者の職場に嫌がらせをすることもあるかもしれません。

 

境界性パーソナリティ障害の人の場合、本人自身が不安定で、パートナーがいなくなると自分が成り立たなくなるので、必死になります。相手に逃げられると、本人自身の精神状態に破綻を来たします。それで、最悪の場合、相手を殺して自分も自殺してしまいます。そういう恐さがあるのが、境界性パーソナリティ障害です。自己愛性パーソナリティ障害の傾向が強い場合、自分が損をすることは避けるでしょう。法に触れない仕方で、相手に対する心理的打撃の大きな嫌がらせをしたり、逆に相手が社会的制裁を受ける立場に立たせようとしてくるでしょう。

  

 

自己愛性パーソナリティ障害

 

自己愛性パーソナリティ障害だけの人の場合、縋りついてくるという感じではありません(相手を困らせようとする脅迫も、「仕事を辞めてやる!」という脅しだったりします)。

 

こうしたタイプのモラハラ・DV加害者に対して被害者が気を付けなければならないのは、密かに有利な立場を確保され、根こそぎ全部持って行かれることだと思います。お金も取られる、子供も取られる、ということです。根こそぎ取って、パートナーを捨てる、ということをします。このタイプの人は、もともと人に対する温かい「情」というものは持っていません。

 

そのうえで、被害者が悪いという話にして、周囲の人たちをもそのストーリーの中に巻き込もうとします。そのため、自分が被害者で、逆にパートナーが「モラハラ」だとか、「精神不安」だとか、「アル中」だとか、「ストーカー」だという話にしてしまうことさえあります。その場合、モラハラ被害をさんざん受けてきたうえに、冤罪被害のようなものにまで遭うということです。かなり精神的に残酷な目に遭います。

 

そのようなわけで、境界性パーソナリティ障害者の場合、被害者の方が先に逃げて、加害者が激しく苦しみ、恨んで犯罪的な攻撃までしてくるという危険があるのに対し、自己愛性パーソナリティ障害者の場合、被害者がさんざんな目に遭わされたあげく、名誉も何も奪われ、加害者が勝ち誇ることになりがちなのではないかと思います。

 

ストーカー事件に発展する場合、境界性パーソナリティ障害の人は復縁を迫ったり、それがダメだと恨みを晴らそうとしてきますが、自己愛性パーソナリティ障害の人がストーカーになる場合は、自分の勝利に対する執着があり、被害者を打ちのめそうとしてくるでしょう。たとえば、相手を取り戻して、今度は自分から相手を捨ててやろうとする人もいるくらいです。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人は、婚外の性的関係をもつことも多いです。恋愛感情などからではなく、自分の性的魅力を確認したくて、<狩り>のような感覚で、そうしたことをするのが好きなように見えます。そんなことが、自分の価値評価につながるため、熱心なのです。相手への愛ではなく、自己愛のために熱心なのですが、中には騙される人もいるかもしれないし、遊びたい人もいて関係が成立するかもしれないし、セクハラだと思いながら我慢している人もいるかもしれません。配偶者に浮気がバレれば、配偶者に性的魅力がないせいだとか、愛がないせいだとかと言って、配偶者が悪いという話にされるでしょう。

  

 

自己愛性パーソナリティ障害、「顕在型」と「潜在型」の違い

 

それから、自己愛性パーソナリティ障害といっても、「顕在型」と「潜在型」とでは、かなり雰囲気が違います。ただし、「顕在型」「潜在型」といってもグレードの違いのようなもので、根底にある本質は同じになります。普段どちらかでも、何かの時に、もう一方の傾向が出るように見えるのではないかと思います。

 

「顕在型」は、皆の前で自慢が止まらなかったり、他人を罵倒したりする人です。欧米には、そうしたパワフルな男性の自己愛性パーソナリティ障害者が多く、欧米を中心にした一般的な診断基準としては、こちらのイメージが強いかもしれません。

 

「顕在型」の自己愛性パーソナリティ障害者は、あからさまなパワハラ型のモラハラをする傾向があると思います。特にこのタイプの人が社会的に大きな権力をもっていると、やはり恐いです。被害者は「力」で潰されるし、社会的に潰されてしまうと思います。外ではセクハラなどもしているかもしれません。

 

しかし、日本には「潜在型」の自己愛性パーソナリティ障害者の方が多いです。控え目であることが尊重される日本の文化では、「顕在型」のように振る舞うと、自分が人から嫌われ、評価も落ちるので、高く評価されたい自己愛性パーソナリティ障害者は、かえってそうした形を取りにくいという理由もあります。

 

外面の良いモラハラ・DV加害者は、こちらにあたることが多いと思います。外では、物腰が低く、穏やかで、丁寧だったりします。特に、目上の人におもねるのは上手いと思います。

 

「潜在型」になればなるほど、卑怯で陰湿な意地悪をしてきます。自分が直接に反撃を受けなくて済むように、自分の悪意を隠します。「相手のため」と、善意を装います。心理操作(マインド・コントロール)が酷いでしょう。言葉と態度とが異なる、二重のメッセージを発したりします。何が気に入らないのか、どうしろと言っているのか、被害者が聞き出そうとしても、決して明確な答えを言いません。それは、被害者の判断能力を奪って、反撃されないようにするためでもありますが、本当は自分が悪いという、自分のやましさを隠すためでもあります。

 

※ マインドコントロールは、何らかの知識やテクニックを知って行っているわけではなく、彼らが内心、自分を守ろうとしているだけで、いわば本能的に、自然に、息をするようにできてしまっているものです。

 

相手が「潜在型」だと、被害者は訳が分からない仕方で、長期にわたって蝕まれていくと思います。特に心理操作は、人間が受ける害悪としては、相当な害悪だと思います。「モラハラ」という言葉がこれだけ一般化されていても、特に悪質な心理操作が行われているケースでは、被害者も周囲も「モラハラ」が起こっていることに気付かないことが、今でもあります。

 

概して自己愛性パーソナリティ障害の人は、言葉を武器に使います。被害者の方が、頭がおかしくなるような屁理屈に屁理屈を重ねます。表層的な知識の羅列で、被害者を煙に巻くこともあります。まともな議論はできず、巧みに論点をずらして、とめどもなく相手を攻撃します。被害者は、膨大な屁理屈をいちいち正すことができなくなり、自己愛性パーソナリティ障害者が勝ち誇ることになるでしょう。彼等は自分の分が悪くなると、いきなり論点を変えたり、相手の人格を攻撃し出したりします。被害者に屈辱を与えるような言葉を、入念に選びます。いったん相手が傷つくと、そこを次からの攻撃の足場にします。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人や妄想症の人は、自分に都合の悪い部分を隠し、都合の良い事実を切り貼りし、何とも悍まし気な脚色をしながら相手を悪者に仕立て上げ、事実関係を正反対に捻じ曲げます。この論法については、下の記事で分かりやすくまとめられています。

 

afreshstart.hatenablog.com

 

  

自己愛性パーソナリティ障害+妄想症


妄想症の人は、自分が裏切られることに対する恐れや猜疑心が強く、人を力や権力で支配しようとします。妄想症は「独裁者の病」と言われてきました。思い込みが深く、訂正不能で、復讐心も強く、最も執拗なストーカーになることもあります。最悪の場合、命を狙われます。

 

DVやモラハラの場面で多いのは、嫉妬妄想と被害妄想だと思います。

 

嫉妬妄想がある場合、パートナーの不貞を疑い(あるいは妄想的に確信して)、がんじがらめに束縛してきます。でも、嫉妬したり独占したりしがたるのは、愛しているからではありません。嫉妬妄想的な傾向のある自己愛性パーソナリティ障害者の場合は、自分が男女関係で下の立場に立たされることに対する恐怖のようなものがあるだけです。そのため、逆に本人は浮気をしている可能性が高いです。

 

それから、必ずしも「妄想性障害」とまでは言えるものでなくても、妄想症的な傾向があると、「投影」や「投影同一視(化)」が酷いかもしれません。これは簡単に言えば、自分の内心で起こっていることを、相手において起こっていると錯覚し、文句を付けてくることです。たとえば、自分が不機嫌だと、相手が不機嫌だと錯覚します。自分が怒っていると、相手が怒っていると思い込みます。

 

妄想症的な人は、被害者に対する悪者扱いが酷いでしょう。被害者にまったく悪意がなくても、自分の悪意を投影して、自分は被害に遭っていると思い込んでいます。しかも加害者は、それが「事実」だと信じて疑いません。むしろ、彼等にとってはそれが現実の事実以上に生々しい、強固なリアリティーです。被害者が事実を訴えても、「嘘をついている」としか思いません。

 

被害者の言動を一々変な仕方で解釈し、一つのストーリーを作り上げ、筋が通っていることを事実の証拠だと確信しています。周囲の人々もそれを信じてしまいます。

 

「自分が被害者だ」と思っているので、攻撃に容赦がなく、被害者が身を守ろうとすると、自分への反撃と捉え、復讐心を募らせます。争いにはモンスター級のエネルギーを注ぎ込みます。

 

たとえば、栗原勇一郎という人がこのタイプだろうと思います。ちなみに、この人に自己愛性パーソナリティ障害があるとしても、「潜在型」です。

 

 

ストーカー化した場合の犯罪の傾向について

 

反社会性人格障害が混じっていると、犯罪的な事もしてくるので、やはり恐いです。犯罪歴があったり、それを隠していたりしないか、注意すると良いと思います。

 

「犯罪」という点について言えば、境界性パーソナリティ障害の人の場合、苦し紛れにそこまでの事をしてしまうことがあるのに対し、反社会性パーソナリティ障害の人の場合は、犯罪を犯すまいというハードルがとても低い、という違いがあります。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人の場合は、法に触れない嫌がらせや、犯行が特定され難い事をしてきます。せいぜい微罪にしかならないような事で、相手に対する心理的打撃の大きな事を選びます。

 

妄想症の人の場合は、被害妄想で相手を恨み、自分に対する不当な扱いと(一人で勝手に)信じることに対する正当な「復讐」として、自分の犯罪を「正義」だと考え、全力で攻撃をエスカレートさせていきます。

 

ですので、この全部の要素を持っている人の場合、被害者が逃げようとするだけで、まったく自己中心的な理由で強烈な恨みを募らせてくるという恐さがあるだけでなく、実際の犯罪に遭う確率も高く、しかも犯行を特定するのが困難で心理的打撃の大きな嫌がらせ(たとえば、誰がやったのか分からない仕方で相手のペットを殺す等)を繰り返し執拗に行う、というような事をしてきます。文筆家の内澤旬子さんが被害に遭ったストーカーが、このタイプだと思います。

 

 

その他

 

上で述べましたように、常軌を逸するモラハラ・DVになればなるほど、加害者には複数の要素が入っていると思います。

 

それから、加害者の品性による影響も非常に大きいです。加害者が下品だったり嗜虐性が高かったりすると、本当に嫌な被害に遭います。

 

人間の尊厳にかかわる事というのがあって、たとえば性的な事や排泄にかかわる事は、人間であるかぎり、他人から遠慮してもらわなくてはいけない事です。ところが、下品で悪質な加害者というのは、相手のそうした点を狙うようにして攻撃してきます。こういう事は「障害」というよりは、品性なのだと思います。

 

男女間のモラハラではありませんが、潰瘍性大腸炎だった安倍総理は第一次政権の後、マスコミなどからこの種のモラハラに遭ったと言えると思います。相手が政治家だったり有名人だったりすれば、どれほど人格を貶める下品な悪口でも言って良いというものではないと思います