卑怯で陰険なモラハラ(イルゴイエンヌの「モラル・ハラスメント」)
下は、主にマリー=フランス・イルゴイエンヌが取り上げている「モラル・ハラスメント」の実例です。これは、「怒鳴る」「罵倒する」といった類のものでないことに注意する必要があります。
何年にもわたる意味不明の不機嫌さ、当てつけのような態度、嫌味な否定の仕方などが「モラル・ハラスメント」であることが、判断できると思います。これは夫婦間や男女間のものとは限りません。
イルゴイエンヌの言う「モラル・ハラスメント」の例
・口調や態度などで、相手に対する否定感、軽蔑、嘲弄、非難などを仄めかす。
・自分を被害者の立場に置く。自分に同情させる。寛容な態度で接するように仕向ける。
・ほのめかしや当てこすり、冗談といった形の非難をする。
・人前で嘲弄したり、被害者のコンプレックスを暴露する。
・被害者の身体的な欠陥をからかう。
・問いただされると、自分の悪意を否認する。
・表面的な意味のほかに、裏に別の意味(つまり、嫌な意味)がこめられた言葉を使う。
・被害者を非難しながら、被害者が説明を求めても、明確な説明を避ける。「自分で考えてみろ」等と言う。被害者は、訳が分からないまま、気分を悪くさせられる。問題の解決のしようもなく、身を守るすべもない。
・後で言い逃れができるような、曖昧な言い方をする。被害者が抗議すると、言い逃れをし、逆に被害者を責める。
・発言に言外の意味を持たせ、被害者を攻撃しておきながら、そんなことは言わなかったと否定する。
・被害者が少しでも抗議すると、被害者の性格が悪いという話にする。
・被害者が怒りや悲しみを表わすと、軽蔑して非難する。嘲弄したり、バカにする。
・被害者が怒ると、それを本人の人格が劣っているせいだと主張する。
・被害者を無視して、見ようともしない。
・被害者が委縮して失敗をするようになると、加害者は非難や侮辱をする口実を得る。
・自分が非難されると、論点をずらし、論ずべき問題点ではなく、被害者の人格を攻撃する。
・話の筋道にあった返答ではなく、被害者の人格を非難する返答の仕方をする。
・主観的に事実を歪曲する。あったことがないことになっていたり、なかったことがあったことになっていたりする。
・被害者を認めない態度をとる。
・駄目だと思わせることを繰り返し言って、被害者の長所を認めない。
・家族や知人が被害者を嫌っているかのようなエピソードを脚色して報告し、仲を悪くさせようとする。
・傷ついている被害者をあざ笑ったり、侮辱したり、非難したりする。
・セックスを拒絶し、それを相手の身体的な魅力のなさのせいにする。
・概して、被害者に、自分が悪くて攻撃されていると思い込ませる。
・周囲には、相手がダメな奴であるせいで、自分が迷惑を受けている、苦労させられている、と思い込ませる。
・周囲や関係者を、自分の味方に付けようとするし、通常、それに成功している。
・「自分はモラハラ被害に遭っている」と言って、相手をやり込めようとする(「モラハラ」という言葉が定着した後で起こるようになったと、イルゴイエンヌは指摘している)。
なぜ卑怯な嫌がらせをするのか?
上のようなモラハラを行う人は、自分が否定されたり、否認されたり、拒まれたりすることを病的に恐れています。自分の心が醜いことを、無意識に知っています。
相手が常に自分を褒めたり同情したり同意したりしていないかぎり、些細なことで自分が否定されたように感じ、自尊心に傷が付く人もいます。中には極度に自意識過剰なため、相手から「否定された」「馬鹿にされた」と一人で勝手に勘違いする人もいます。彼らにとってそれは許しがたいことで、その腹いせをせずにはいられません。
そして、相手から反撃されないような、間接的な仕方で腹いせをしてきます。このような仕方で腹いせするのも、自分が否定されないようにするためです。この種の攻撃を受けるひとは、何が起こっているのか訳が分からないでしょう。
モラハラ体質の人は、しばしば被害者が他の人から攻撃されたりするときに、一緒になって被害者を叩きます。そのタイミングなら、絶対に自分が反撃される余地がなく、被害者を打ち負かすことができるからです。
自分が何が気に入らないかを明確に説明しないのも、論点が明らかになってしまうと、自分が否定されかねないからです。
やたらと怒鳴ってくるモラハラ・DV加害者は、このような陰湿なモラハラ人種とは多少異なり、わりあい正面からきます。自分が否定されても、それ以上に大きな声や力で被害者を否定して黙らせようとします。
いずれの場合も、モラハラ加害者が相手を悪者にするのは、相手を攻撃する自分が非難されないようにするためだったり、自分に対する相手の反論を封じるためです。