歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

自分の悪事を隠し、被害者の抵抗を「悪事」として、「正義」を振りかざす攻撃者たち — 加害者の話は分かりやすく、被害者の話は分かりにくい —

 

前回の記事で、DV・モラハラ加害者には、被害者を悪者扱いし、対立が深まると被害者を加害者に仕立て上げようとする傾向があると述べました。

これは彼らの権利意識や被害者意識が高く、欲が深いからです。

加害者は、男性である場合も、女性である場合もあります。

 

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実際の加害者が「被害者」を自称している場合、第三者にとって、加害者の話は一見分かりやすく、実際の被害者の話は分かりにくいものになりがちです。

 

なぜなら、加害者は第三者に対しては、自分の悪事を隠して、それに対する被害者の反応や抵抗だけを取り上げ、被害者が「頭の変な人間」「とんでもない人間」「暴力的な人間」「DV夫」で、「自分にこんな事をしてきた」と言い立てるので、第三者には被害者がひどく醜悪な人物に見えるからです。加害者の話は単純化されていて、分かりやすいものになります。(逆に、詳しく話す破目になると、矛盾が露呈していきます。)

 

それに対して、被害者が自己弁護をしようとすれば、それまでの長い経緯や、自分が受けてきた一連の攻撃、それが自分にとってなぜ致命的であるか等、場合によっては自分のプライバシーにかかわることまで説明しなければなりません。被害者の話は長くて複雑なものにならざるを得ません。(そして、その複雑な話を聴いて理解する気のない人には、嫌がられます。)

 

 

加害者の精神的攻撃が異常なものになればなるほど、被害者は説明するのが困難になる

 

特に、加害者が異常者である場合、被害者の話は正常者にとって、極めて難解なものになるでしょう。

というのは、異常者になればなるほど、正常者が理解できないような事で攻撃してきたり、遠回しの仄めかしのような変質的な仕方で脅迫してきたり、被害者の弱点(それは被害者が公言したくないプライベートな事だったりしますが)を狙ってきていたり、自分の真っ黒な邪悪さを隠すために、被害者にも(あるいは自分自身にも)嘘をついていたりといったような、異様な圧力をかけてくるからです。

 

また、異常者の異常な攻撃に対する被害者の反応は、どうしても異常な言動になってしまいます。しかし、これは当たり前のことです。異常な仕方で異常な事をされれば、それに対するリアクションも異常になってしまうからです。


ところが上にも書いたように、一般に加害者は第三者に話をする際、自分の悪事を隠して被害者の異常な言動だけを取り上げ、「とんでもない人間だ」と言います。つまり、自分に都合の悪い事実を隠して、相手の異常なリアクションだけを取り上げ、相手を醜悪な人物に見せかけます。そして、人々に「そんな事をするのは異常者だ!」と思わせてしまいます。

 

それに対し、被害者はなぜ自分が異様なリアクションを取ったか、うまく説明できないでしょう。なぜなら、加害者の異常性を、正常者である被害者は、自分でも理解できないし*1、自分でも理解できないような事を他人に分かるように説明するのは無理だからです。


たとえば、加害者の悪質な脅しが、被害者にしか分からない仄めかしによるものである場合(そして、そういう事はありがちだろうと思いますが)、その仄めかしが本当に「脅迫」であることを、被害者はうまく証明できません。

このように、被害者にはどう説明して良いのか分からないことが、山ほどあるものです。*2

 

 

精神的な殺人

 

マリー=フランス・イルゴイエンヌによれば、「モラル・ハラスメント」の最も恐ろしい被害は、被害者が「頭がおかしい」「人格的にどうかしている」「とんでもない人間」「暴力的な人間」といった汚名を着せられ、執拗な嫌がらせによって実際に精神的に破綻させられ、社会的生命なども奪われ、場合によっては自殺に追いやられることです。

イルゴイエンヌが「精神的な殺人」と言っているのはこうしたことです。

これはイルゴイエンヌによれば、男女間でなくても、職場の人間関係などでもあることです。

 

 

政治的なプロパガンダとして用いられる同様の手口

 

政治的な何等かの集団が、敵視する相手に対して、こうしたモラル・ハラスメント的な手口を、戦略的に狡猾に用いることがあります。

ちょうどDV・モラハラ加害者たちが行うように、自分たちに不都合な部分を隠し、好都合な部分だけを切り取って編集し、相手を悪者に仕立て上げ、正義を振りかざして自分たちの攻撃を正当化します

たとえば自分たちの悪事を隠し、相手のリアクションを「悪事」としてマスコミなどで宣伝したり、相手の言動の一部だけを切り取って、話を捻じ曲げ、相手をあり得ないような悪者に見せかけたりします。

あり得ないような話になるのは、作る方が無理して不自然なストーリーを作っているからですが、相手が「頭のおかしい、とんでもない奴だからだ」ということで人々を納得させてしまいます。

自分たちが相手に対して行っている悪事を、相手がしていると主張することもよくありますが、これもDV・モラハラ加害者が被害者に対してすることと同じです。

このやり方で攻撃されている政治家は、決まって極度に醜悪な人格異常者に見えますが、政敵に汚名や濡れ衣を着せて、叩き潰すという方法は、古典的と言って良いだろうと思います。

このようなやり方で行われる暴力は、モラルによって食い止められることがないので、徹底したものになります。

 

 

以上のような問題をなくしていくためには、こうした手口が一般に知られることが、まず必要だと思われます。

 

 

*1:特に、加害者の真意が醜悪なものである場合、加害者はそれを誤魔化して、表向きは「被害者が悪い」という話にしようとします。加害者には、自分でも目を逸らしたい<やましさ>があります。

それはたとえば<妬み>、<劣等感をもたなくて済むように、自分の劣悪性から目を逸らしたいという気持ち>、<理不尽な我儘を通そうという欲求>、<相手に依存し、相手を利用しようとする気持ち>、<自分が非難され、不利な立場に立たされたくないという気持ち>などです。

ストーカーや性犯罪者などであれば、<相手からの拒絶に対する恐怖心>や<相手に拒絶の機会を与えない工夫>などです。

こうした異様な性質を、善良な被害者は想像することができず、「被害者が悪い」とか「被害者に落ち度がある」とか言われると、被害者は自分でも「そうかもしれない」と思ってしまいます。

*2:被害者は、自分が被害者であることを認めてもらったとしても、異常者というものを知らない第三者からは、普通では考えられないような「落ち度のある人」に見られてしまいます。

たとえば、被害者は「なぜ逃げなかったのか?」と疑問に思われ、被害者自身にも問題があると考えられがちですが、逃げようと思って簡単に逃げられるのは、相手が正常者の場合だけです。

加害者が異常者であればあるほど、被害者は第三者から理解してもらえませんが、それは正常者である第三者が、異常者についての知識をもたないからであって、被害者が変な人だからではありません。