歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

モンスター妻

 下の記事にあるような、モンスター妻の話をときどき耳にします。

 

toyokeizai.net

 

 被害者は、ただ普通に結婚生活を全うし、可愛い子供を大事に育てようとしているだけなのです。ところが、まるで子供を人質に取られているかのようになってしまいます。加害者に見られるのは幼児性と攻撃性で、我儘、自己中心的、癇癪持ちで、感情のコントロールのできない人です。ちょっとでも思いどおりにならないと切れて怒鳴り散らします。お財布を握って、いつの間にか数百万という単位で、夫の貯金がなくなっていきます。さすがに夫が問いただすと、「稼ぎが悪い」、「もっと稼いで来い」と言って逆ギレします。人を利用して、自分の思いどおりにしようとして、暴言を吐いたり、相手の心理的な弱点を攻撃し、心を傷つけることによって征服し、自分に歯向かってこないようにします。これ以上利用できなくなると、ポイっと捨ててきます。自分の有利になるように、離婚の準備を始めます。

 

 被害者が感情的になる人の場合、加害者は被害者をわざと怒らせて、被害者の方から離婚の話をさせます。はた目には被害者の方に問題があるかのような恰好になります(これは、典型的なモラハラのやり方です)。被害者が厄介な病気を発病して、闘病生活に苦しんでいる最中に、こうしたことを仕掛けてきます。モラハラの場合、そのようにして子供の養育権を取られますし、母親は精神的にも子供を父親から引き離すために、父親がいかに悪いか、いかにダメな人間か、を言い聞かせて育てるようになったりもします。被害者が、目に入れても痛くないほど可愛がっていた子供の姿を見ようとすると、まるで被害者の方がストーカーであるかのようになってしまいます。極度の苦痛により、被害者が常軌を逸しているような振る舞いをさせられてしまい、被害者に人格的な問題があるかのように見えることになってしまいます。*1 被害者は、ただ「嵌められた」と言うしかなくなります。

 

 それが、もっとも怖ろしいモラハラです。モラハラは相手の性格の弱点を見つけて攻撃することにより、被害者が自分から失敗したり、精神的に崩れていくようにさせます(イルゴイエンヌによれば、このやり方が「モラハラ」の真骨頂のようです。相手を精神病にしたり、自殺に追いやることもあります)。確かに「嵌められた」というのは周囲の人たちも分かるだけに、被害者を助けようもなく、被害者を諦めさせるしかなくなってきます。しかし、どうしようもない状況にある被害者を他人が説得して諦めさせようとするとき、その人たちは心の中で、被害者の心を切り捨てているのです。そうして被害者は、周囲からも取り残され、孤立していきます。嫌なモラハラになればなるほど、被害者にそこまでの悪影響を及ぼします。男性の場合、怖ろしいのはこの種の女性と結婚して子供を作り、子供を取られ、財産も取られてしまうことです。

 

 このようなモンスター妻は、愛する相手と結婚したいというよりも、最初から人を利用しようとしているフシがあります。結婚を焦らせます。家族と一緒になって、積極的に話を進めていってしまったりします。誰とでも仲良くでき、人とトラブルを起こしたことのない人ほど、自分の年齢などのタイミングによっては「こんなものかもしれない」と思って、そのまま押し切られて結婚してしまいます。自分自身が善良で、善い友人に囲まれている人は、世の中にこんなモンスターがいて、それが最初、どんな顔をしてやってくる、などということは、経験していなくて普通でしょう。

 

 驚いたのは、上の記事のコメント欄で、被害者にも落ち度があるとして、批判している人たちがいたことでした。記事の読者は、最初から「とんでもないモラハラ妻だった」という結果を知っているから、結果論でいくらでも被害者の落ち度を批判できます。人が酷い目に遭ったと言っているのに、その人を上から目線で見て、結果論でものを言って、賢いような顔をするなんて、恥ずかしくないのかと思います。なぜ普通に、人の傷みが分からないのか、と不思議になります。

 

*1:イルゴイエンヌは、モラル・ハラスメントというのは、「<非難された人間が非難されたとおりの状態になっていく>という独特の経過をたどるものだ」と言っています(マリー=フランス・イルゴイエンヌ『モラル・ハラスメントが人も社会もダメにする』, 紀伊国屋書店, 2003年, p.245)。