歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

ストーカーやセクハラの怖いのは、断る時

 一般的にストーカーもセクハラも、悪質な加害者の本当に怖いところは、キモチ悪く迫ってきたり、粘着してきたりするところなどではありません。被害者が断ったり、被害者の嫌悪感が伝わったりした時です。邪悪な人間ほど自己中心的で、相手に対する思いやりなどというものは微塵もありません。

 

 セクハラにしても、加害者が自分を拒絶した女性に対して腹を立て、仕事上の意地悪をするようになったり、悪い噂を流したりして、女性が会社にいられないようにしたりすることがあります。

 

 よく、悪質なストーカーやセクハラの被害者が、「なぜ、そんな男と早く縁を切らなかったのか?」と言われたり、思われたりしてしまいますが、被害者は相手の気配から、もっと怖ろしいことが待っていそうで、簡単に縁を切ることなどできないのです。トラブルにしないで済めば、そうしたいと思うのです。

 

 特に、ストーカーになる人は精神構造が普通の人と違っています。普通の人なら、好きな相手との関係が終わるのは、辛いことだとしても、しばらく悲しく、淋しいという程度のことです。ところが、ストーカーになるような特殊な人格構造の人たちにとっては、自分の存立がかかわる重大事なのです。それは、相手をそれだけ愛している、などという理由ではなく、何か、自分の沽券やプライドにかかわるとでもいうような事です。自分しか大事ではなく、その自分を気持ち良くさせておかないということが許せないのです。だから、相手が自分から離れていくだけで、怖ろしいほどの復讐心を抱きます。

 

 被害者になる人は、何となくその気配を感ずるから、うかつに相手に逆らうことができません。また加害者の方でも、そういう気配をそれとなく伝えてくるのです。相手が自分から離れていかないようにするためです。この関係自体が、ほとんど精神病的な関係で、被害者はその時点でノイローゼのようになります。

 

 そして、いよいよ被害者が離れていこうとすると、加害者は脅迫などをしてきます。

 

 私自身がたまたま知っている事例では、境界性パーソナリティ障害をもっている人は、「自殺してやる」という脅迫や、狂言自殺によって、相手を自分に引き止めようとし、それでも駄目な場合、誹謗中傷によって恨みを晴らそうとしたりします。こういう人の場合、相手が自分から離れるのはプライドが許さないというよりも、相手に対する依存関係がないと、自分の存在を維持できないような脆さから、そうしているようです。おそらくそれで、本当に本人自身が「生きていられない」と感じて、「自殺する」と言うのでしょう。そして、自分をそんな目に遭わせたという恨み、なのでしょう。

 

 自己愛性パーソナリティ障害をもっている加害者の場合は、「自殺してやる」という脅迫ではなく、ひたすら被害者を攻撃する脅迫や嫌がらせをする傾向があると思います。境界性パーソナリティ障害の人たちのように、自分が不安定で一人で立っていられないというよりは、他人を征服して優越感をもとうとする人たちです。自分が捨てられるくらいなら、相手を破壊します。「自殺する」と言う場合は、相手を倫理的に非難し、支配するための単なる脅しでしょう。逆に、人によっては、被害者を自殺に追い込むことくらいは平気でする、というか、まさにそういう事を狙ってきます。更に、自分が悪人の汚名を着せられたくなくて、被害者にあらぬ汚名を着せてきます。

 

 警察沙汰になるような傷害事件や殺人事件に至るのは、反社会性パーソナリティ障害があるケースで、自分が犯罪者になることを辞さない、という人の場合なのでしょう。この種の人格異常を抱えている人たちは、いろんな障害にまたがっていたりします。