歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

心理操作をしてくる人々(マニピュレーター)

 

文庫 他人を支配したがる人たち (草思社文庫)

文庫 他人を支配したがる人たち (草思社文庫)

 

 

 

マニピュレーター(潜時的攻撃性パーソナリティ)とは?

 うわべは「いい人」。しかし、好戦的な意図を必死に隠しながら、狡猾で陰険な手段を用いて他人を攻撃します(「ヒツジの皮をまとうオオカミ」)。

 自分のイメージ操作も行っており、関係する相手に自分の正体をストレートにさらけ出しません。(「相手を思うままに操作することも大切だが、それでも自分に対する印象はどうしてもそこないたくはない」(p.178)。)

 

こわれた良心

「概して言えるのは、彼らの場合、良心が形づくられたにせよ、それは致命的にゆがんだ良心であることが少なくない」(pp.113-114)。

 

勝つことへの執着

潜在的攻撃性パーソナリティにうかがえる第一の特徴は、なによりも人に勝利することを重んじている点にある。その決心はゆらぐことなく、しかも手口は狡猾だ。時に無慈悲をきわめてさまざまな策略を弄するのは、自分の望みを果たすためだけではなく、本当の自分に向き合うのを避けるため、他人にその正体を知られなくないからなのである」(p.76)。

他人に勝つことにより、自己評価を高めていると言えます。また、この種の人々は第一に、自分自身が自分の醜い内面を直視しなくて済むように、自分を偽ります。

 

 

攻撃の意図を押し隠す 

「そのひそかな攻撃が人目にふれるのを嫌悪するのは、そのほうが自分の面目も保てるのでつごうがいいからであり、本当のねらいが相手に知れてしまえば抵抗も避けられないものになってしまう」(p.60)。

 

「(人の心の操作に長じたマニピュレーターの)巧妙な手口を駆使するその攻撃を見破るのはほとんど不可能に等しい。ねらわれたら最後、自分が巻き込まれていたと気づいたころには、すでに相手の支配下にあって、もはや取り返しのつかない劣勢に立たされている」(p.20)。

 

「関係操作の手口として、攻撃意図をおしかくしそれでいて相手を威嚇しながら屈服を強いるような行為はきわめて高い効果をもたらす」(p.25)。

 

「マニピュレーターが法律を破ることはない。犯罪にあけくれる毎日を送っているわけでもなければ、他人に暴力的な怒りを爆発させることもない」(p.67)。

 

犠牲者が良心的に優れていればいるほど、その良心につけこんで相手の自信や不安をゆさぶり、自分の意に従わせておく手口にたけているのだ。相手が良心的であればあるほど、相手に罪悪感を抱かせるというこの手口はさらに効果を発揮する」(p.179)。

 モラハラをしてくる人たちと、やり方が似ていると言えるでしょう。

 

 

人はなぜ見抜けないか

「(被害者は)相手が自分を追い詰めて支配下におき、こちらを思いどおりにしたがっていることにうすうすは気づき、無意識のうちに脅威は抱いている。だが、なぜ自分に敵対するのかという問いに対しては、客観的で明白な理由や証拠が見当たらない」(p.28)。

相手が自分に対して「攻撃をしている」という証拠がなくては、被害者は相手との対決姿勢を取っていいのかどうか、分かりません。

 

 

人を操り支配する戦略と手法

 以下のような方法を用いることにより、自分の好戦的な意図を隠し、被害者を守勢に追い込むと、著者は述べています。

彼らのこんな言動をきちんと理解できる人などほとんどいないので、人を搾取して思いのままに操り、また相手をいたぶりコントロールする手段として、こうした方法はきわめて効果的な手口になる」(p.161)。

 

「策略は単独で用いられることもあるが、手口に長じたマニピュレーターほど一度にさまざまな手をくりだしてきて相手の操作を試みることが多く、自分は体よく翻弄されていたと被害者が気がつくころには、すでに取り返しのつかない状況に陥っている」(p.162)。

  

〈矮小化〉― 自分の行動は人から言われるほど悪意のあるものでも無責任な行為でもないと主張する。取るに足りないものだと見せかける。否認の一種

〈虚言〉― 嘘と判別しがたい巧妙な虚言を口にする傾向がある。たとえば、事実を歪曲して伝える。意図して意味を曖昧にしておく。肝心な部分だけ、意図的に“言い忘れる”。ストーリーは念入りに組み立てられているため、聞かされたほうは話の全貌を知り得たという印象を抱いてしまう。

〈否認〉― 攻撃的な意図があることを、相手に対してだけでなく、自分自身の心の中でも認めない。大義名分を掲げて、自分でもそのためだと考える。

〈選択的不注意(あるいは選択的注意)〉― 自分の目的の妨げになるものすべてに対して、注意を払うことを拒む。自分に不都合なものは無視する。

〈合理化〉― 他人を攻撃するための口実。自己正当化のための屁理屈のようなもの。相手を黙らせることだけでなく、自分自身の良心も黙らせることができる。

〈話題転換〉― 話題をすり替え、問題をはぐらかす。

〈はぐらかし〉― 質問に対し、的外れな返事や不適切な返事で応じる。

〈暗黙の威嚇〉― 微妙で、もってまわった、それとははっきりと分からない脅しを用いて、相手を威嚇する。あからさまではないので、憎悪や脅しだと覚られないまま、相手を守勢に追い込む。

〈罪悪感を抱かせる〉― 良心のある相手に向かって、「配慮が足らない」、「自分勝手だ」などと皮肉る。

〈羞恥心を刺激する〉― もってまわった言葉使いや、皮肉、あてこすりで、相手の不安をかきたて、その自信にゆさぶりをかける。犠牲者が自分の能力や価値観に疑問をもつようにさせる。相手の劣等感をあおり、自分の支配下に置く。

〈被害者を演じる〉― 相手の同情を得て、利用する。相手の同情心に付け込む。

〈犠牲者を中傷する〉― 被害を受けているのは自分で、自分を守るために、はからずも闘いに応じるしかなかったと見せかける。本当の被害者をさらに守勢に追い込む。

〈忠実なるしもべを演じる〉― 自分勝手な目的を、あたかも崇高な理念に奉じているかのように取り繕う。

〈人をそそのかす〉― 人を称賛して褒めそやしたり、これ見よがしの援助の手を差し伸べるふりをしたりする。相手の警戒心を解き、信頼や忠誠心を自分に差し出させる。

〈責任を転嫁する(他人のせいにする)〉― 激しい攻撃性を帯びた人格は、自分に向けられた非難を転嫁できる先をつねに探し求めている。

〈無実を装う〉― 加えた攻撃について、それはわざとではないと相手に信じ込ませ、非難されるような行為はしていないと被害者を納得させる。

〈無知を装う・混乱を装う〉― “しらばっくれる”。なぜこちらを攻撃しようとするのか、面と向かって相手にその理由を問いただしても、“知らない”と言い張る。

〈これ見よがしに威嚇する〉― 自分の目的を達するために障害があると怒る。激しい感情表出で、相手を服従させる。

 

※ こちらの記事は、期間限定の公開にする予定です。