歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

ストーカー被害の5つのタイプ

 精神医学者の福島章氏の分類によると、ストーカー被害には次の5つのタイプがあります。これは、氏によればストーカーの行動の類型です(福島章『ストーカーの心理学』PHP新書, 1997年を参照)。

 

 

 

ストーカーの心理学 (PHP新書)

ストーカーの心理学 (PHP新書)

 

 

1.イノセント・タイプ(面識がない人)

 見ず知らずの人や、何の交流もない人につきまとわれる。被害者はストーカーが誰だか知らない場合もある。ストーカーが一方的に思いを募らせて付けまわしている。「イノセント」(無邪気、無垢、罪がない)というのは、被害者の心情を指す。このタイプのストーカーは被害者が自分に何の愛情をもっていなくても、また、場合によっては自分が誰かを知られてなくても、尾行したり、生活を監視したり、プレゼントや手紙を送ったり、電話をかけたりして、求愛し、自分の恋情に執着する。ストーキングの行為自体が目的になって、相手に嫌がられていても、それを行うことが相手との関係を保つ手段になっている場合もある。気分は《愛》から《妄念》《妄執》にすり替わっている。このタイプのストーカーは男性に多い。夢想に情熱を傾けるのは男性の特性で、女性は現実主義が多く、一方的な愛情にそれほど夢中にならないから。優しくされただけで、自分に恋していると勘違いしたり、相手と付き合っていると思い込んだりするストーカーもいる。

 

2.挫折愛タイプ(元交際相手)

 相手との関係の終わりを受け入れない。関係を打ち切りたいという相手の意志にもかかわらず、関係の修復を執拗に迫る。異常に粘着質の高い元カレや元カノ。攻撃が加わることがあり、相手の気が変わったことを恨んで嫌がらせをしたり、執拗につきまとって攻撃したりする。ひどい場合は殺傷事件、強姦事件、殺人事件に至ったりすることもある。

福島章氏は、挫折愛タイプの中に、学校や職場での顔見知りといった単なる知人関係・友人関係も含めているようだが、一方が男女関係を認めたことがない関係と、元交際相手とはかなり質が違い、イノセント・タイプに近い関係もあるだろう。

 

3.破婚タイプ(元婚姻者、配偶者)

 より深刻な「別れ話」のもつれ。婚姻関係にあった者のうちの一方が婚姻関係を打ち切ろうとした場合に生じるトラブル。二人の関係が長く、密接であったぶん、愛憎の葛藤も深刻で、殺人事件のような重大な事件に発展する可能性がある。

 

4.スター・ストーカー(熱狂的なファン)

 芸能人、政治家、評論家、学者、著名人、有名人を標的とするもの。憧れの対象である有名人と個人的な関係になることを求める。有名スターを標的にすることによって、犯人自身がマスコミに報道されて有名人になることもあるので、それがスター・ストーキングの目的と考えられるケースも多い。スター・ストーカーの中には、有名人との間に空想に基づく性的関係をでっちあげて、周囲に喋ったり、マスコミに流したりして、間接的に願望を満たす者もいる。単なるファンではなく、「私はスターに愛されている」「愛し合っている」といった妄想的な思い込みを抱いたり、迷惑行為に及んだりする場合を、スター・ストーカーと言う。

 

5.エグゼクティブ・ストーカー(憧れの先生などを対象にする)

 芸能人や政治家ほど有名ではないが、多少名前が知られていたり、比較的社会的地位が高かったりする人が被害者になることがある。医師、教授、弁護士、また、親身になって他人の話を聞き、相談に乗る対人サービスを業とする人々などである。勝手に幻想を抱いて付き纏う。

 

※ しばしばストーカーに見られるのは、自分が相手に愛されているという「被愛妄想」です。病気の妄想なのです。これについては、改めて扱います。