歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

職場におけるモラル・ハラスメント(パワハラとちょっと違います)

 イルゴイエンヌの著書から、職場におけるモラル・ハラスメントの特徴をまとめておきます。

モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする

モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする

 
モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない

モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない

 

 

 《職場におけるモラル・ハラスメントとは、不当な行為(身振り、言葉、態度、行動)を繰り返しあるいは計画的に行うことによって、ある人の尊厳を傷つけ、心身に損害を与え、その人の雇用を危険にさらすことである。またそういったことを通じて職場全体の雰囲気を悪化させることである》(2003, p.27)。

 

権力の濫用によるハラスメント

これは、必ずしもモラル・ハラスメントではない。(※「パワハラ」と呼んだ方が良いかもしれません。)

 

 権力の濫用によるハラスメント――目に見える形で行われている(暴君のように直接的に権力を行使する。<力>で権力を手に入れる。はっきりと権力を押し付けてくる)。

 

 下級管理職が自分に力があると思いたいために行われることが多い。つまり、自分の弱さを埋め合わせるために、誰かを支配する必要を感じる(1999, p.1999, p.125-126)。一般的に、権力を濫用するタイプのモラル・ハラスメントは誰か特定の個人を標的にするわけではない。加害者から見て、自分より弱い立場の人間に向かう。

  • 上司はその地位を利用して過大な要求を行い、また部下たちがそれに従わなければ、権力を守るために嫌がらせをする。会社の業績をあげるためだと言って、すべてを正当化する。
  • 圧力を加えられた部下たちは、ストレスの過剰によってミスが多くなったり、病気休養するようになったりする。

 

加害者が強度に自己愛的な性格の人間である場合

 これが典型的なモラル・ハラスメント。陰湿なやり方で、相手の心を傷つける攻撃。これはとりわけ被害者に重大な打撃を与える(加害者が強度に自己愛的な性格の人間である場合。<言葉>で権力を手に入れる。陰湿な形で相手をコントロールしようとする)。

 このタイプの人間は、ただ自分が優れていることを証明するために他人を貶める。それによって自分の能力の欠如を覆い隠す。他人の価値を引き下げれば、それだけで自分が優れた人間になったような気がする。出世の妨げになる人間や才能にあふれている人間を取り除こうとする。自分より弱い立場の者を攻撃して満足するのではなく、自分の邪魔になる人間の力を弱めていく(1999, p.1999, p.131-132)。相手の弱点を攻撃し、弱点がなければ弱点をつくりだしていく(1999, p.153)。

 

(1)支配の段階

 取るに足らないことから始まり、ちょっとした皮肉や嫌がらせくらいにしか考えない。だがそのうちに攻撃は激しくなり、被害者はだんだん追い詰められていく。

 さまざまな方法を用いて、相手を心理的に縛りつけ、反抗できないようにする。相手の批判能力を奪い、何が正しくて、何がまちがっているのか分からなくする。それから相手にストレスを与える。

 

(2)暴力の段階

 被害者は、あとは弱い立場に立たされ、今度はあからさまな敵意を受けて、長い暴力に苦しむことになる。

 被害者の精神を破壊し、本当に駄目な人間にしてしまう。恐怖を感じると、被害者はいつくかの病的な行動を示し始める(被害者は初めから精神に障害があったわけでも、特に弱い人間であったわけでもない。しかし、「あいつは仕事ができない」、「性格がおかしい」、「頭がおかしい」、「精神的に問題がある」などの非難を受けているうちに、被害者は不注意になり、能率も悪くなり、本当に仕事ができなくなったり、性格がおかしくなってきたりする。それが周りの人たちの目に触れ、被害者に対する評価となる)。被害者自身も自身を喪失する。⇒ 加害者は自分の攻撃を正当化する。被害者は何をしようと、何を言おうと、自分が悪いことになってしまう。対立の責任はすべて被害者に押しつけられる。このとき、加害者のほうはもはや相手を追い詰め、混乱に陥れて、仕事上の失敗をさせることしか考えていない。モラル・ハラスメントの加害者が雇用者の場合、能力の欠如や仕事上の失敗を理由にして、簡単に被害者を解雇できる。

 

※まわりの人間は、保身から、あるいは恐怖から、この現象から遠ざかろうとする。

※下級管理職の管理能力のなさにより、人間関係を調整できない。

 

【具体例】

  • 不機嫌になったり、怒鳴ったり、罵ったりする。
  • 相手を認めない態度を取る(相手の顔を見ない。挨拶をしない。人間ではなく<モノ>のように扱う。相手がいる前で誰か他の人にその人の事を言う。絶対に話しかけない)。
  • 冗談に紛らわせて批判をしたり、嫌味や皮肉を言ったりする。
  • それに対する説明を求められても、はぐらかす。
  • 相手が反論できないように、矛盾した言葉づかいをする。
  • ある仕事をいいつけておいて、そのいっぽうでその仕事ができないようにする(2003, p.75)。
  • 曖昧でハッキリしないかたちの非難をする。
  • コミュニケーションの拒否。相手との対立をハッキリさせず、その対立を解消する方法を見つけるかわりに、相手を排除しようとする。→ 対立点がハッキリすると、被害者は状況を理解し、身を守る余地ができる。話し合って問題を解決することができる。逆に、対立がハッキリしなければ、被害者は問題の解決のしようがなく、ただ不安に陥る。被害者が罪悪感を抱きやすい傾向にあると、さらに悪化する。「私が何かいけないことをしたのだろうか?」 被害者は自分の感覚さえ疑ってしまう。「自分が大げさに感じているのではないか?」
  • 相手の評判を落とす(それとなく悪口を言う。小さな嘘やほのめかしなどによって、周りの人たちが誤解するように仕向ける)。
  • 被害者を馬鹿にしたり、辱めたり、嘲弄したりする。
  • ひどいあだ名をつける。
  • 障害や、性格的、肉体的な欠点をからかう。
  • 密かに相手を中傷する噂を流し、それが被害者の耳に入るように仕向ける。
  • 相手を怒鳴りつける。
  • 監視したり、いつでも緊張させておくように仕事の期限を設定して、それを正確に守らせたりする。
  • 相手を孤立させる(仲間外れにして仕事を与えない。ひとりだけ何かに参加させない)。まわりの人たちに不満を訴えて、味方をつくらないようにするため(2003, p.73)。(弱体化、無力化)
  • 社内で何が起こっているか分からないように、必要な情報を与えない。
  • 相手の能力にふさわしくない、つまらない仕事をさせる。
  • 過大な要求をして仕事を急がせる。
  • 被害者を挑発して非難する口実をつくる(相手の評判を落とし、本人に対しても悪い自己イメージを与える)。
  • セクハラを行う。

 

※ こちらの記事は、仕事の都合により後で削除する可能性もありますので、必要な方はコピーをお取りください。先日公開した「夫婦間のモラハラ・チェックリスト(特徴と具体例)」も同様です。

 

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