歪んだ心理空間における精神的被害

モラハラ、DV、ストーカー、セクハラ、性犯罪等における加害者心理と被害者心理

準強制わいせつ罪に問われた乳腺外科医

東京都足立区の病院で2016年、手術直後の女性患者の胸をなめ、自慰行為をしたなどとして、準強制わいせつ罪に問われた医師の控訴審判決が13日、東京高裁でありました。朝山芳史裁判長は一審の無罪判決を破棄し、懲役2年の実刑を言い渡しました。

 

 

麻酔覚醒時の「せん妄」

裁判の争点は、女性の訴えが「せん妄」状態による幻覚か否か、でした。術後の麻酔覚醒時に「せん妄」が起こることがあるそうです。

  

せん妄状態での幻覚体験は非常に現実味があるそのため、医師が幻覚であると説明すると、患者は驚くことが多い。せん妄のために性的幻覚を見ることはよくあり、A子さんの訴える内容は「あまりに典型的」という。

 

こちらの39~46ページに、せん妄・幻覚の体験談集が出ています。

https://gekaimamoru.org/wp-content/uploads/2021/07/259aeb2f68c87ebd5c9ceb8da39d9773.pdf

 

news.yahoo.co.jp

 

独立行政法人国立病院機構横浜医療センター副院長・手術部長の鈴木宏昌氏は、麻酔科医の立場からPACU(麻酔後ケアユニット)における麻酔覚醒時せん妄に関する論文を引用、乳がんと腹部の手術ではせん妄リスクが高まるという研究結果を紹介した。自身も事実と異なる患者の思い込みで、口を利いてもらえなくなった経験があるという。看護師が患者に聞くと「先生が娘をレイプした」と言う。集中治療室(ICU)入室中の患者の、いわば妄想だった。

 

www.medical-confidential.com

 

問題となっている時間帯の被害女性の様子については、看護師の証言もあります。

 

事件当日、手術が終了し病室へ運ばれたとき、女性患者の意識状態はJCS200(Japan Coma Scale,ジャパン・コーマ・スケール。200は痛み刺激に対し覚醒しない状態、少し手足を動かしたり、顔をしかめたりする)で「痛い痛い」と繰り返し、看護師が話しかけても応じなかった。看護師はこのときのことを「検温をしようと女性の衣服をめくって、体温計をわきの下に挟もうとしたら、突然、『ふざけんな、ぶっ殺してやる』とかすかな声で言われた」と一審で証言した。このとき、女性の目は開いていなかったという。

  

www.msn.com

 

 

 

いい加減な証拠

下の記事によると、裁判でDNA鑑定が争点になることが明らかになっていたにもかかわらず警察や検察側が有罪の証拠となるものを廃棄してしまっています。それにより、DNAの鑑定結果は検証不能になったようです。

 

www.medical-confidential.com

 

 また、下の記事によると、大量のDNAが検出されたとする根拠は、科捜研研究員が実験ノートに当たるワークシートに記載した数字のみだったそうです。しかもこの記録に、「消しゴムで消して直した跡が少なくとも9ヵ所」あったというのです。

 下の記事がとてもよくまとめられているので、簡単に全体像を把握したい方は、こちらをご覧になると良いと思います。読み終わった後気が付きましたが、江川紹子氏による記事でした。

 

news.yahoo.co.jp

 

 

  

「犯行」の不自然さ

被害を訴えた時間帯(術後の35分間)には看護師が何度も出入りしており、患者の手にはナースコールのボタンも握られていたそうです。 その状況で自慰行為まで行いたくなる医師が存在するでしょうか?

柳原病院事件で課題となった「術後せん妄」への対応 – 集中出版 SHUCHU PUBLISHING

 

消灯後の夜に個室に行くわけではなくて、昼間の4人部屋で、薄いカーテン一枚でしか区切られていない空間です。看護師がしょっちゅう出入りして、別の患者さんも3人いて、カーテンは床下35cmまでは開いていて、隣のベッドとは1メートルしか間はないです。 1回目に訪れた時も男性外科医は、ベッドの側に看護師がいたと証言しています。2回目の回診でも、カーテン越しにはAさんのお母さんもいました。男性外科医は、診察後に入ってきた看護師とも話をしています。

 

www.m3.com

  

 

 

「せん妄」専門家の意見を完全に無視した判決

ameblo.jp

 

上の記事によると、

今回の法廷には、せん妄の専門家として出廷したのは、第一審に登場した精神科医、麻酔科医、そして控訴審で登場した精神科医の3名のみである。

そしてこの3名ともが、今回の事件はせん妄下に生じた性的幻覚の可能性がある(高い)と口を揃えて述べていた。

 

それに対して、「検察から出てきた証人は、自ら『せん妄の専門家ではない』と堂々と述べるような医師であった」そうです。

 

せん妄についてのズブの素人である裁判官が、せん妄についての日本指折りの専門家に対して、科学的根拠を全く示さずに彼らの証言の信用性を否定し、無罪判決を破棄して有罪判決を言い渡した。

これは、専門家に対する冒涜だと思う。

  

www.bengo4.com

 

上の記事によれば、

高野弁護士は「検察側証人の診断は、世界的なせん妄に関する診断基準を無視した独自のもので、なんの裏付けもない。科学者たちの証言を根こそぎ否定する暴挙に出た」と批判。「この時代に冤罪が生まれたことについて衝撃を受けている。さらなる戦いを進めていきたい」と最高裁で争う姿勢を示した。

 

 

 

女性の証言を重視の裁判

朝山芳史裁判長によると「女性の説明は具体的かつ詳細」だといいます。他の記事にも、女性の証言が「生々しく」「一貫している」「迫真性がある」と書かれているのを見ました。

 

しかし、「せん妄」は目の前の現実に一部の妄想が入り込む現象で、本人の意識ははっきりしているといいます。本人には、現実そのものに感じられ、明確な記憶として残るそうです。

つまり「せん妄」であれば、「具体的」で「詳細」で「生々しく」「一貫しており」「迫真性がある」ものであって当然だということになります。

 

 

 

冤罪なら被告人は否認するのが当然なのに、それが厳罰理由

被告人は、原審以来犯行を否認して、反省、謝罪の態度を示しておらず、もとより慰謝の措置も一切講じていない。そうすると、被告人の刑事責任は到底軽視できるものではなく、被告人がこれまで医師として相応の活動をしてきたことや、前科前歴がないことなどの、被告人のために酌むべき事情を考慮しても、主文の実刑に処するのが相当である」と締めくくった(控訴審判決の要旨は『東京高裁「反省、謝罪の態度を示さず、刑事責任は軽視できない」』を参照)。

 

www.m3.com

 

冤罪だとしたら、必死になって犯行を否認し続けるのは当たり前だし、反省や謝罪などしないのが当たり前だし、「慰謝の措置」など講じて、いわゆる「もみけし」を図ったりしようものなら、逆にそれをもって有罪の証拠とされてしまうのではないでしょうか。 

 

無実なら当然の事>ばかりを取り上げて、有罪だとしたら<犯罪者として厳罰に値する態度>である、したがって実刑に処するのが相当であるというのは、どうかしています。

 

 

 

医療現場に生じた衝撃

痴漢事件のように、被害を受けたという一方的な主張で逮捕され、否認しても聞いてもらえないとなると、医師は異性の患者を診ることに恐怖を感じるようになるでしょう。この事件で、医師は105日も拘留されました。

 

 医療関係者有志で作る「外科医師を守る会」の呼び掛けで、早期釈放を求める約3万筆の署名が集まったりするなど、医療界の注目が集まっている。

 このような中、早稲田大学の校友会である稲門医師会と稲門法曹会が11月27日、「柳原病院事件を考える」をテーマにした合同シンポジウムを開いた。まず、医師で弁護士の大磯義一郎・浜松医科大学医学部医療法学教授が登壇し、次のように述べた。

 「本件が当該医師に与えた影響は極めて大きい。実名・顔写真付きの報道により、ネット上では誹謗中傷の嵐が起きている。また、長期にわたる逮捕・勾留が行われ、保釈も認められていない。収入の道は断たれ、本人は仕事に復帰できるだろうかと鬱々とした日々を送っていると思う」

 

www.medical-confidential.com

 

 共産党系の民医連だから警察の標的?


実際に患者の主張だけで逮捕されるとしたら、医療現場の混乱は避けられない。都内の外科医は「非常勤医師のためにここまでしてくれる病院はなかなかない」と柳原病院の姿勢を評価するが、一方で同院が民医連系、つまり警察が目の敵にする共産党とつながりが深いことが警察の〝標的〟になったのではないかとの指摘もある。

 

www.medical-confidential.com

 

逮捕された医師によれば、

 

「警察の非科学的な捜査により、私は100日以上身体拘束され、社会的信用を失い、職を失い、大変な思いをした。さらに、警察の一方的主張に乗った報道、悪のりしたネットの書き込みによって、私や家族、周囲の人が大きく傷ついた。

 

性犯罪の冤罪被害は、人生全体に及び、家族にも及ぶ、極めて重大なものです。

 

 

(追記)2022年2月18日、最高裁が東京高裁の判決を「破棄」、高裁へ差し戻し

男性外科医に対する上告審判決公判が2022年2月18日、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)で開かれました。

 

三浦裁判長は懲役2年を命じた2審・東京高裁判決を破棄し、同高裁に差し戻す判決を言い渡しました。

 

せん妄については、その可能性が十分にあるとした1審判決が事実上支持されました。

DNA鑑定の妥当性についても、疑問点が解消し尽くされておらず、検査結果の信頼性にはなお不明確な部分が残っていることが指摘されました

東京高裁の判決の事実認定は、不合理で著しく正義に反するとされました。

そこで、審理を尽くすため高裁に差戻すということです。

 

www.m3.com

 

 

これに対し、弁護団は「ただちに無罪を確定させることなく、本件を東京高裁に差し戻したという点はあまりにも中途半端」であり、「検察官が有罪の立証に失敗したことは既に明白であるから、最高裁は一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった」だと述べています。

 

そもそも科捜研が鉛筆書きで多数の書き換えが行われたワークシートしか残さず、検証を行うための資料を全て廃棄しているので、もはや「信頼性」を検証することは不可能です。

 

弁護団によると、「こうした検査結果を刑事裁判の証拠に使うことは許さない、という明確な判断をすること」こそ最高裁が行うべきことだったのに、「そうした判断をせずに、不毛な審理をさらに続けることを要求するのは、被告人とその家族にとって甚だ過酷な状況を強いるものである。非人道的というべきである。」

 

www.m3.com

 

下のリンクは、どなたでも全文が読めます。

 

gekaimamoru.org